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最高裁判所第二小法廷 昭和35年(オ)256号 判決 1961年12月01日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士高橋一次の上告理由について。

原判決が、本件訴は法律上の利益を欠く旨を判示したのに対し、論旨は、再評価額の更正は、譲渡所得を含む上告人の総所得金額に直接の関係があり、訴の利益がある旨を主張して原判示を非難するのである。

しかし、廿日市税務署長は、上告人の申告に対し、再評価差額を零としたのであつて、換言すれば、上告人の再評価税納税義務の存在しないことを宣言したに過ぎず、上告人の権利、利益を侵害したものとはいえないから、右税務署長の行為を是認した被上告人の審査決定について、その取消を求める法律上の利益はないものといわなければならない。再評価差額がないということは、結局、上告人の所得金額を多額ならしめる結果になることは論旨のとおりであるが、上告人の不服は、要するに、所得金額の決定が不当であるという点にあるのであるから、上告人としては右所得金額に関する処分について争訟を提起すべきであつて、再評価額の増額のみを求めて争うべきものではない。論旨は独自の見解であつて採用することができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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